佐藤家は290年前頃に本家から小さな山を頂いて分家して以来代々、林業の傍ら時代に合わせて、さまざまな家業を営んできました。私の父が「株式会社佐久」を立ち上げ、家業から会社組織に変えたのは、1966年のことです。

私も父の後を継ぎ、不動産賃貸と林業の会社として経営していましたが、2011年の東日本大震災により多くの不動産を失い、事業の再編を余儀なくされました。幸い佐藤太一専務を中心に意欲的な職員が集まり林業を中心に据えた新たな体制ができました。経営の基本は佐藤家が代々伝えてきた、その地に合った木を育てるという「適地適木」を徹底し、下層植生にも目を向けて「良い森林土壌を育くむ」事を心がけ、適切な森林管理をしていく事です。

私達は震災により地域があるべき姿を真剣に考えさせられました。町の境界が分水嶺で囲まれ降った雨が全て川を通じて里を潤し、海に注いでいる環境にある南三陸の『森林』はいかにあるべきかを議論し、適切な森林管理の指標とすべく、株式会社佐久は町有林や他の森林所有者と共に2015年にFSC国際森林認証を取得しました。

幸い南三陸に育つ杉は通直で緩慢、材の色合いに優れ「美人杉」と称される良材です。私たちは、責任のある森林管理から生産された『南三陸杉』の価値を検証し、ブランド化に取り組んでいきます。また、株式会社佐久が管理するおよそ270haの森林を木材生産だけの林業経営から新たな森林の可能性を模索する場としていきたいと考えています。